よもぎの種まきは、春より秋のほうがいいのではないか。
去年、信州の畑で実際に試してみて、いま、そう感じています。
ただし、最初に大切なことを書いておきます。
これは、わたしたちが一年間、自分たちの畑で試してみた結果です。春蒔きと秋蒔きを、同じ条件で何百株も比較した実験ではありません。
だから、この記事では「秋蒔きが正解です」とは言いません。
むしろ、自分たちの畑で起きたことを、これまでに報告されているヨモギの生態や種子の研究と照らし合わせながら、記録しておきたいと思います。
そして、よもぎを長く育ててきた方や植物に詳しい方に、ぜひ教えていただきたい。
「それは、こういうことだよ」と教えてもらえたらうれしいです。

(chatGPTに画像を作ってもらいましたがちょっと微妙かな…)
春に蒔いたよもぎは、雑草に負けた
わたしたちは、春の5月によもぎの種を蒔きました。
ところが、小さなよもぎの芽が育っていくよりも先に、まわりの雑草がどんどん大きくなっていきました。
最初は、よもぎもちゃんと芽を出しています。
でも、そこからが難しい。
地面に近いところで小さく育っているよもぎの上を、周囲の草が覆っていく。
気がつくと、どこによもぎがあるのかわからない。
「よもぎなんて、道端にいくらでも生えているのに」
そう思っていた自分たちにとって、これは意外な経験でした。
以前の記事「畑は、急がない」にも書きましたが、野生のよもぎを見ているだけでは分からないことが、育ててみるとたくさんあります。
自然の中では強そうに見える植物でも、種から育てる最初の段階では、別の植物との競争に弱い。
これが、最初の発見でした。
そこで、10月下旬にもう一度、種を蒔いてみた
翌年に向けて、今度は秋に種を蒔いてみました。
10月下旬です。
すると、少しだけ芽が出ました。
ただ、そのあと気温が下がっていきます。
地上の小さな葉は茶色くなり、やがて見えなくなりました。
正直に言えば、今回も失敗したと思いました。
「やっぱり種から育てるのは難しいのかな」
そう思って、その場所をしばらく見なくなりました。
ところが、春になって畑を見てみると。
同じ場所から、よもぎが芽を出していました。
しかも、春に蒔いたときに見た頼りない芽とは、少し印象が違いました。
冬を越した株が、春の畑から顔を出していたのです。
これは、ヨモギの「普通の姿」なのかもしれない
あとから調べてみると、ここには興味深い研究があります。
1967年に発表された、ヨモギの種子繁殖についての研究です。
この研究では、ヨモギは秋に開花し、種子は開花後およそ20日で発芽能力を持つようになり、50日ほどで発芽能力がほぼ最高になることが報告されています。
さらに、ヨモギの種子には休眠がなく、自然条件では晩秋から初冬に発芽し、子葉の幼苗の状態で冬を越すと観察されています。
つまり、秋に種が落ち、秋から初冬に芽を出し、小さな状態で冬を越して、春を迎える。
これは、今回わたしたちの畑で起きたことと、かなりよく似ています。
もちろん、わたしたちの畑で起きたことが、その研究結果を証明するわけではありません。
でも、「秋に蒔いたら冬に枯れたのに、春になったら出てきた」という出来事を、ヨモギの生活史の一つとして考えることはできそうです。
「冬に枯れた」のではなく、地上部が見えなくなった
ここで、一つ表現を変えたいと思います。
これまで、わたしは「冬に枯れたよもぎ」と書いていました。
でも、正確には少し違うのかもしれません。
ヨモギは多年草です。
農研機構も、ヨモギについて「地下茎から春に発生し、種子と地下茎で繁殖する多年草」と説明しています。
また、野外のヨモギについて、芽出し後にロゼット状になって越冬する姿も紹介されています。
つまり、冬に地上部の姿が変わったからといって、植物全体が死んだと考えるのは早い。
今回のわたしたちの秋蒔きでは、冬のあいだに目立った地上部がなくなり、春になって再び芽を確認できました。
「冬に何も起きていなかった」のではなく、ヨモギの一年の生活の中に、冬を越す時間がある。
そう考えると、畑の見え方が少し変わります。
よもぎは、秋に花を咲かせる
もう一つ、面白いことがあります。
ヨモギは、秋に花を咲かせます。
研究では、ヨモギは短日植物で、北部九州では8月下旬から9月上旬ごろに蕾がつき、9月下旬から10月上旬ごろに開花したと報告されています。
農研機構の資料でも、ヨモギは秋に小さな頭花を多数つける植物として紹介されています。
そして、花が終わったあとに種子ができます。
つまり、ヨモギにとって秋は「終わり」の季節ではありません。
次の世代につながる種をつくる季節でもあります。
そう考えると、10月下旬に種を蒔いた今回の経験も、少し違って見えてきます。
人間から見ると「冬になる前に種を蒔くなんて、遅すぎるのではないか」と思います。
でも、ヨモギ自身の一年を見れば、秋に種子ができ、その後に発芽して越冬するという流れがあります。
自然の中で起きていることを、人間が少し後から追いかけているだけなのかもしれません。
ただし、「秋蒔きのほうが絶対にいい」とはまだ言えない
ここは、この記事で一番大事なところです。
今回の経験から、「ヨモギは秋に蒔いたほうが育つ」と結論づけることはできません。
実際、ヨモギの種子を販売している事業者の栽培情報では、播種期を3月から7月としている例もあります。
また、わたしたちが行ったのは一年間の観察です。
春蒔きと秋蒔きについて、同じ土壌、同じ種子量、同じ水分条件、同じ雑草管理で比較したわけではありません。
そのため、今回の結果だけから「秋蒔きのほうが発芽率が高い」「秋蒔きのほうが生育が早い」といったことは言えません。
むしろ、いまの段階で言えるのは、次のようなことです。
- わたしたちの畑では、5月に蒔いたよもぎは雑草との競争に負けた
- 10月下旬に蒔いたよもぎは、一度地上部が見えなくなった
- 翌春、同じ場所から再びよもぎが芽を出した
- この経過は、ヨモギが晩秋から初冬に発芽し、幼苗で越冬するという既存研究と整合する
- ただし、秋蒔きが春蒔きより優れていることを示す比較試験ではない
このくらいの距離感で書くほうが、畑で起きたことを正直に残せると思っています。
では、なぜ秋蒔きが「雑草対策」になるように見えたのか
ここは、これから確かめたいところです。
わたしたちの仮説は、「春になってから一から始める」のと、「秋に芽を出して冬を越した状態で春を迎える」のでは、春のスタート地点が違うのではないか、というものです。
春蒔きでは、種から発芽し、幼い芽をつくり、そこから生育を始めます。
ところが秋蒔きでは、秋のうちに発芽した幼苗が冬を越します。
そして春には、周囲の植物も一斉に動き始めます。
この違いが、結果として「春の雑草との競争」に影響している可能性があります。
ただし、ここで「冬のあいだに根を十分に張っている」とまでは、まだ言えません。
ヨモギの種子繁殖を調べた研究では、秋に発芽したものが幼苗で越冬することが報告されています。一方、実生から新しい地下茎が形成されることについては、別の研究で、発芽後の生育段階と季節によって形成までの期間が異なることが示されています。
つまり、「秋に芽を出す」ことと「秋のうちに大きな地下茎をつくる」ことは、同じではありません。
ここは、今後自分たちの畑で確かめてみたいところです。
種を蒔くなら、深く埋めすぎない
もう一つ、今回の調査で興味深かったのが、種を蒔く深さです。
ヨモギの種子繁殖についての研究では、覆土が深くなるほど出芽率が低下し、実験条件では0.5cmの覆土で出芽が確認された一方、1cmでは出芽しなかった条件が報告されています。
そのため、ヨモギの種を蒔く場合は、「しっかり土をかぶせる」というより、種子が深く埋まりすぎないようにすることが重要だと考えられます。
これは、わたしたちが次回の播種で特に意識したいところです。
ただし、この数値は1967年の研究で使われた特定の土壌条件・実験条件によるものです。
そのまま「0.5cmが最適」と一般化するのではなく、「深く埋めすぎると出芽しにくい可能性がある」という知見として受け取るのがよさそうです。
よもぎは、種だけで増える植物ではない
ここも、育て始めてから知ったことです。
よもぎは種子だけで増えるわけではありません。
地下茎でも広がります。
農研機構によると、ヨモギは地下茎が地中を横にはって広がり、種子と地下茎の両方で繁殖します。
だから、道端や畦などで、一度よもぎが定着すると毎年のように姿を見せるのです。
種から芽を出して、地下茎を形成し、そこからさらに広がっていく。
「どこにでも生えている」というよもぎの強さは、一つの仕組みだけで説明できるものではなさそうです。
種子から育ててみると、その最初の段階が意外に繊細であることが分かります。
そして、定着した後には地下茎による旺盛な繁殖力を見せる。
このギャップも、よもぎという植物の面白さだと思います。
わたしたちが次の秋に試すこと
今年は、昨年の経験をもとに、もう少し条件を記録してみようと思っています。
ただ種を蒔いて、「生えた」「生えなかった」で終わらせるのではなく、できるだけ記録を残します。
- 播種した日
- 播種した場所
- その日の気温や天候
- 種子の採取時期
- 播種から発芽までの日数
- 発芽した株数
- 冬越しできた株数
- 春の芽出し時期
- 周囲の雑草の状態
- 春以降の草丈や株の広がり
もし余裕があれば、同じ畑の中で春蒔きと秋蒔きを並べてみたいと思っています。
そうすれば、少なくとも自分たちの畑では、何が起きているのかをもう少し具体的に見られるかもしれません。
これから、よもぎを育ててみたい方へ
現時点で、わたしたちが試してみたい方法は次のようなものです。
- 信州では10月下旬ごろに秋蒔きを試してみる
- 種を深く埋めすぎない
- 冬に地上部が見えなくなっても、すぐに失敗と判断しない
- 春になったら、同じ場所から芽が出てくるか観察する
- 芽が出たあとは、周囲の雑草との競争をよく観察する
ただし、10月下旬という時期を全国共通の播種適期としておすすめしているわけではありません。
ヨモギの生育や種子の動きは、地域、標高、気温、土壌、水分などによって変わるはずです。
だからこそ、いろいろな場所で試してみる価値があると思っています。
「秋に蒔く」というより、ヨモギの一年に合わせてみる
今回、調べていて一番面白かったのはここでした。
ヨモギは秋に花を咲かせます。
種子が成熟していきます。
そして、自然条件では晩秋から初冬に発芽し、幼苗で冬を越すことが報告されています。
そう考えると、「秋に種を蒔く」というのは、人間の都合で秋を選んでいるだけではないのかもしれません。
ヨモギ自身が一年を通して行っている営みに、少し合わせてみる。
そんな見方もできそうです。
よもぎに詳しい方へ、教えてください
この記事は、答えではありません。
まだ途中です。
特に、次のことを知りたいと思っています。
- 地域や標高によって、秋蒔きの適期はどのくらい変わるのか
- 10月下旬に蒔く場合、信州のような寒冷地では早いのか、遅いのか
- 種子を採取してから、どのくらいの期間で播種するのがよいのか
- 種を蒔く深さや土の状態は、どの程度が適しているのか
- 秋に発芽した幼苗は、実際にどのような状態で冬を越しているのか
- 春蒔きで雑草との競争を避けるためには、どんな管理方法があるのか
- 種子から育てた株が地下茎を形成するまでに、どのくらい時間がかかるのか
もし、よもぎを長く育ててきた方、農業や植物生態に詳しい方がいらっしゃれば、ぜひ教えてください。
一行でも構いません。
InstagramのDMやコメント、またはLINEから、気軽に送っていただけたらうれしいです。
いただいた知恵は、次の種まきで試してみます。
よくある質問
よもぎの種まきは、春と秋のどちらがいいですか?
一概には言えません。
ヨモギの種子繁殖についての研究では、自然条件で晩秋から初冬に発芽し、幼苗で越冬することが報告されています。一方、緑化用ヨモギでは3月から7月を播種期としている例もあります。
わたしたちの畑では、5月蒔きより10月下旬蒔きのほうが翌春の定着を確認しやすかったため、現在は秋蒔きに注目しています。
10月下旬に蒔けば、必ず春に芽が出ますか?
いいえ。
地域、気温、土壌水分、種子の状態などによって結果は変わると考えられます。
今回の10月下旬という時期は、あくまで信州のわたしたちの畑で試した一例です。
冬によもぎの葉が枯れました。もうだめですか?
すぐに失敗と判断しないほうがよさそうです。
ヨモギは多年草で、種子から発芽した幼苗が冬を越すことも報告されています。
冬に地上部の姿が変わっても、春まで様子を見てみる価値があります。
よもぎの種は、深く埋めたほうがいいですか?
深く埋めすぎないほうがよい可能性があります。
ヨモギの種子繁殖に関する研究では、覆土が深くなるほど出芽率が低下し、0.5cmの覆土では出芽した条件でも、1cmでは出芽しなかった条件が報告されています。
ただし、これは特定の実験条件で得られた結果なので、0.5cmがすべての畑での「正解」と考えるのではなく、深播きに注意するための参考値として考えています。
よもぎは種から育てるより、地下茎から増やしたほうが簡単ですか?
定着したヨモギは地下茎でも増えるため、種子だけが増殖方法ではありません。
一方で、わたしたちは「種からよもぎを育てる」ことそのものにも意味があると考えています。
どんな環境で芽を出し、どう冬を越し、いつ地下茎をつくり、どのように畑に定着していくのか。
そこまで知ることが、よもぎを育てることの一部だと思うからです。
まとめ
- わたしたちの畑では、5月に蒔いたよもぎは雑草との競争に負けた
- 10月下旬に蒔いたよもぎは秋に発芽し、冬に地上部が見えなくなった
- 翌春、同じ場所から再び芽が出て、定着している株を確認できた
- ヨモギについては、晩秋から初冬に発芽し、幼苗で越冬するという研究報告がある
- 種子の発芽には適した温度があり、深く埋めすぎると出芽しにくくなることも報告されている
- ただし、秋蒔きが春蒔きより優れていると結論づけるには、まだ観察と比較が足りない
冬の畑は、何もしていないように見える
冬の畑は、何も起きていないように見えます。
葉はなくなり、土だけが残る。
春に蒔いたよもぎが雑草に負けた経験があったからこそ、秋蒔きしたよもぎが冬を越して春に芽を出したとき、少し考え方が変わりました。
植物は、いつも人間が見える形で成長しているわけではない。
芽が出ることだけが、成長ではない。
そして、冬に何も起きていないように見える時間も、植物にとっては一年の一部です。
急いで結果を出そうとするのではなく、その植物がもともと持っている時間に、少しこちらが合わせてみる。
今回の種まきから、そんなことを考えるようになりました。
今年も10月の終わりに、また種を蒔いてみます。
今度は、播種日も、発芽した日も、冬を越した株数も、できるだけ記録してみようと思います。
一年後には、今より少しだけ、よもぎのことが分かっているかもしれません。
そして、もし違っていたら。
そのときは、この記事も書き直します。
畑で試して、調べて、また試す。
それが、わたしたちのよもぎの育て方です。
畑の取り組みについては、YOMOGI BASEのよもぎ畑のページにまとめています。
参考にした研究・資料
伊藤健次・井手欽也・井之上準「ヨモギの生理生態およびその防除法に関する研究 第2報 種子繁殖について」『雑草研究』6巻、1967年。
同研究では、ヨモギの開花時期、種子の成熟、発芽温度、土壌水分、播種深度、越冬形態などについて調べられています。
農研機構「ヨモギ」
ヨモギの多年草としての特徴、地下茎による繁殖、春の芽出しなどについて確認しました。
なお、この記事では、研究結果をそのまま「信州の畑での正解」として扱っていません。
研究で分かっていることと、わたしたちの畑で観察したことを分けて書いています。
この記事は、信州の畑でよもぎを育て、鍼灸の仕事をしながら、よもぎのこれからを考えている人間が書いています。
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よもぎ、暮らし、養生。
こころに、余白を。
YOMOGI BASE
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