なぜ香りで休まるのか 鼻と脳と、自律神経のシンプルな話

なぜ香りで休まるのか 鼻と脳と、自律神経のシンプルな話

仕事を終えて、玄関を開ける。
温かいお茶をいれた瞬間に、ふっと肩の力が抜けたことはありませんか。

何か特別なことをしたわけではない。
ただ、香りがふわりと立ちのぼっただけ。
それなのに、こわばっていた呼吸が、少し深くなる。

香りで肩の力が抜けるのには、理由があります。
香りは鼻から「感情の脳」へ最短で届き、自律神経にそっとはたらきかけるからです。
今日はその仕組みを、養生の視点から解説していきます。

香りだけが、脳の奥へ“近道”を通る

香りで休まるのは、嗅覚が「感情の脳」へ最短で届くためです。

わたしたちの五感のなかで、嗅覚は少し特別です。
目で見たものや耳で聞いた音は、脳に届く前に「視床」という中継地点をいったん経由して整理されます。
ところが香りの情報だけは、この中継をへずに、感情や記憶に深く関わる脳の領域(大脳辺縁系)へ、ほぼダイレクトに届くことが、神経科学の分野で知られています。

大脳辺縁系は、懐かしさや安心感、快・不快といった情動、そして記憶との結びつきに関わる場所です。
ある香りをかいだ瞬間に、昔の風景がふっとよみがえる事はありませんか?

フランスの作家プルーストが、紅茶に浸したお菓子の香りから幼い日の記憶をよみがえらせた逸話にちなんで「プルースト効果」と呼ばれる現象も、この近道で説明されると考えられています。

考えるより先に、感じてしまう。
香りには、そんなはたらきがあります。

「リラックスしよう」と思っても、心や身体はなかなか言うことを聞いてくれません。
でも香りは、そうした“考える回路”よりもさらに奥の感覚を刺激します。
だから「気づいたら、少しゆるんでいた」が起こるのです。

 

自律神経は、頑張ると逃げていく

ここで、もうひとつ大切な話があります。
自律神経のことです。

自律神経は、呼吸、体温、心拍、消化、睡眠のリズムなどを、わたしたちが意識しなくても調整してくれている仕組みです。
活動モードに関わる交感神経と、休息や回復に関わる副交感神経が、シーソーのようにバランスを取りながら働いています。

ところが現代の暮らしでは、このバランスが崩れやすい。
スマホの通知、気を張る場面の多さ。
身体は家に帰っていても、頭の中だけがずっと動き続けていることがあります。

やっかいなのは、自律神経の切り替えは「よし、今からリラックスしよう」と力んだ途端に、かえって難しくなることがある点です。

力を抜こうと頑張るほど、うまく抜けない。
眠ろうと焦るほど、目が冴える。
そんな経験がある方も多いのではないでしょうか?

だからこそ、必要なのは「自分で操作しようとしすぎない入口」です。
香りは、その入口のひとつになりえます。

(→ここテストに出ます)

心地よい香りに触れているとき、呼吸が深くなり、休息に関わる副交感神経のはたらきが優位になりやすいんです。

香りと自律神経の関係については、アロマセラピーの領域でもそうした傾向が研究で報告されています。
もちろん感じ方には個人差があり、香りだけですべてが変わるわけではありません。
それでも「香りで少し落ち着く」という体験は、こうした身体の仕組みと無関係ではないのです。

 

「整える」より、「整っていく」を待つ

ここで少し、養生の話をさせてください。

養生というと、何かを足すこと、頑張ること、正しいことを続けること。
そんなイメージがあるかもしれません。

でも、わたしたちが大切にしたい養生は、少し違います。

急いで治すのではなく、急がずに整えること。
何かを足すより、余分な力を手放していくこと。
「整えなければ」と握りしめるより、「整っていく余白をつくる」こと。

香りで休まる時間は、まさにこの養生に近いものです。

特別な道具も、難しい知識もいりません。
ただ、自分が心地いいと思える香りのそばで、数分だけ何もしない。
それだけで、張りつめていたものが少しほどけることがあります。

病院に行くほどではない。
でも、なんとなく重い。
なんとなく疲れている。
なんとなく、気持ちに余白がない。

そんな日々の小さな不調に対して、自分で自分に手をかけること。
夜の香りは、そのためのとても始めやすいと思うのです。

 

よもぎという、暮らしに根ざした香り

数ある香りのなかで、わたしたちがよもぎを大切にしているのも、ここに理由があります。

よもぎは、昔から暮らしのすぐそばにあった植物です。
草餅にして食べる。
お風呂に浮かべる。
すえて温める。
特別な日のためというより、ふつうの毎日を支える草として、人の手の中にあり続けてきました。

YOMOGI BASEのよもぎは、長野県の畑で育っています。
寒暖差のある土地で、風と光を浴びながら育った草の香りには、どこか清々しさがあります。

華やかに主張する香りではありません。
むしろ、静かで、控えめで、暮らしの一部にになじむような香りです。

でも、その控えめさこそが、夜にはちょうどいい。
何かを足しすぎず、気持ちを強く引っ張りすぎず、ただそばにいてくれる。
よもぎの香りには、そんな良さがあるように思います。

もちろん、香りの感じ方には個人差があります。
ある人にとって落ち着く香りが、別の人にはそうではないこともあります。
香りだけで不調のすべてが解決するわけでもありません。

それでも、香りが暮らしにもたらすものは大きいです。

 

今夜、ひとつだけ

むずかしいことは、何もいりません。

今夜、眠る前に。
スマホを少し遠くに置いて、好きな香りをひとつ、そばに置いてみてください。

お茶でも、お花でも、湯気の立つものでも、香りのあるものなら何でもかまいません。
もしよもぎの香りが好きなら、それでももちろん。

そして、その香りが立ちのぼるあいだだけ、何もしないでみる。
考えごとが浮かんできても、追いかけない。
ただ、息を吸って、吐く。

それだけで、アクセルを踏みっぱなしだった一日が、少しずつほどけていくことがあります。
それが、あなたへの今夜のセルフケアです。

わたしたちはいま、そんな「夜の香りのおてあて」に寄り添えるものを、よもぎから少しずつ形にしています。
近いうちに、あらためてお知らせできればと思っています。


よくある質問

Q. 香りで本当に気持ちが落ち着くのですか?
A. 香りの情報は、感情や記憶に関わる脳の領域(大脳辺縁系)へ比較的ダイレクトに届くと言われています。「考えるより先に、ほっとする」が起こりやすいのはこのためです。感じ方には個人差があります。

Q. 自律神経と香りは関係がありますか?
A. 香りに触れることが呼吸の深さや気分の変化につながり、休息モードへ移りやすくなることがあります。「リラックスしよう」と力むほど切り替わりにくいので、操作しすぎない入口として香りは向いています。

Q. よもぎの香りはどんな香りですか?
A. すっと鼻に抜ける、爽やかな香りです。和のイメージが強いよもぎですが、ヨーロッパでは古くからハーブとして料理や暮らしに使われてきた植物でもあります。華やかに主張せず、暮らしの輪郭に静かになじむ清々しさ。夜、何もしない時間にちょうどいい香りです。


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