実はお灸で使うモグサの原料はよもぎなんです。
こんにちは
YOMOGI BASEです。
今日は代表が鍼灸師ということもあり、
よもぎとお灸の話をお伝えしていきますね。
ちょっとでもお灸に興味を持っていただけましたら幸いです。

原料は、よもぎの葉の裏の白い毛
お灸に使う、あの小さなワタ。
指でつまめるほどの、やわらかな綿のようなもの。
あれが何でできているか、考えたことはありますか。
答えは、よもぎです。
道ばたに生えている、あのよもぎ。
春に摘んで草餅にする、あの草。
お灸に使われる「もぐさ」は、よもぎから作られています。
ただし、使うのは葉っぱ全体ではありません。
使われるのは、葉の裏にある白い毛。
今回は、もぐさがどのように作られ、なぜ長い年月使われ続けてきたのか。その背景を、少し時間をさかのぼりながら紹介します。
もぐさは、よもぎの「葉の裏」でできている
よもぎの葉を裏返すと、白っぽく銀色に見える部分があります。
これは、葉の裏側に細かい毛がびっしり生えているためです。
この白い毛を集め、精製したものが「もぐさ」です。
作り方は、非常に手間がかかります。
まず、よもぎを刈り取り、十分に乾燥させます。
その後、乾いた葉を石臼などで細かく砕き、篩(ふるい)にかけながら、葉の緑色の部分や葉脈、不要なものを少しずつ取り除いていきます。
最後に残る、白く細かな繊維。
それが、もぐさになります。
つまり、もぐさは乾燥したよもぎの葉そのものではありません。
よもぎの葉の中でも、ほんの一部分。
葉の裏側にある白い毛を、時間をかけて取り出したものなのです。
精製を重ねるほど、もぐさは白く、細かく、やわらかなものになります。
そのため、ひとつまみのもぐさの背景には、多くのよもぎと、長い手仕事があります。
なぜ、よもぎがもぐさの原料になったのか
ここで疑問が生まれます。
なぜ、数ある植物の中で、よもぎだったのでしょうか。
理由のひとつは、その燃え方にあります。
よもぎの葉裏の毛は、火をつけると勢いよく燃え上がるのではなく、ゆっくりと燃焼します。
炎を大きく上げず、じわじわと燃え続ける。
この性質によって、小さな火を扱うお灸という道具が成立しました。
紙や木片のように一気に燃えてしまうものでは、同じような使い方はできません。
よもぎの葉裏にある細かな毛が持つ、穏やかな燃焼性。
それが、人々の手当ての道具として選ばれ、長く使われてきた理由のひとつです。
戦時中はよく燃える草とされ、火種としても使用されていました。
もぐさがよもぎから作られ続けてきた背景には、長い経験の中で見つけられた植物の性質があります。
お灸は、いつから日本にあったのか
では、その歴史を少したどってみます。
お灸につながる考え方は、古代中国で発展しました。
中国では、二千年以上前の医学書に、灸に関する記述が見られます。
その知識は日本にも伝わり、六世紀頃には大陸から医学のひとつとして伝来したとされています。
平安時代に成立した日本最古級の医学書『医心方』(984年)にも、鍼や灸についての記載があります。
(参考:せんねん灸「お灸の歴史」)
千年前の日本で、すでにお灸は記録に残す価値のある知恵だったのです。
よもぎの葉の裏の小さな毛が、人の暮らしの中で長く使われてきたことがわかります。
江戸時代、もぐさは全国へ広がった
時代が江戸になると、もぐさはより身近な存在になりました。
特に有名だったのが、伊吹山周辺で作られた「伊吹もぐさ」です。
中山道の柏原宿(現在の滋賀県米原市周辺)には、もぐさを扱う店が並び、旅人にも知られる名産品となりました。
江戸時代後期の『木曽路名所図会』(1805年)にも、柏原宿ともぐさの関係が記されています。
また、柏原宿の「亀屋左京」は、店名を歌にして広めたことで知られています。
現代でいう広告やブランドづくりに近い工夫を、江戸時代の商人も行っていたのです。
もぐさは、単なる道具ではなく、旅の土産としても親しまれる商品でした。
芭蕉の旅にも登場する、お灸という習慣
俳人・松尾芭蕉の『奥の細道』にも、お灸に関する記述があります。
長い旅へ向かう前、足に灸を据えたことが書かれています。
当時のお灸は、特別なものではありませんでした。
旅の前に体を整える。
季節の変化に合わせて、自分をいたわる。
そんな暮らしの中の習慣として存在していたのです。
草餅。
よもぎ湯。
そして、お灸。
日本人は、同じよもぎを、さまざまな形で暮らしに取り入れてきました。
そして今、国産のもぐさは少なくなった
長い歴史を持つもぐさですが、現代では環境が変化しています。
明治以降、西洋医学が広がる中で、鍼やお灸を取り巻く環境も変化しました。
それに伴い、もぐさ作りの担い手や産地も少しずつ変わっていきました。
現在、日本で使われるもぐさの多くは海外からの原料に依存しているとされ、国産のよもぎから丁寧に作られるもぐさは限られています。
千年以上続いてきた、
「よもぎを育てる」
「刈り取る」
「乾燥する」
「もぐさにする」
という営み。
その技術や文化は、決して当たり前に残るものではありません。
私たちYOMOGI BASEも、信州でよもぎを育てています。
今はできていませんが、信州のよもぎでつくる信州のもぐさの製造に挑戦しています。
まだ道の途中ですが、そんな未来を思いながら畑に立っています。
急いで答えを出すものではありません。
千年続いてきた草との関わりを、もう一度、暮らしの中へ手繰り寄せたい。
そう考えています。
よもぎは、名前を知られないまま、そばにいた
もぐさの原料は、よもぎ。
それも、葉の裏にある白い毛です。
その小さな部分が、長い年月をかけて人の暮らしと結びつき、お灸という文化になりました。
草餅の緑。
よもぎ湯の香り。
お灸の小さな火。
すべての入口には、一本のよもぎがあります。
普段は意識されなくても、よもぎはずっと、日本の暮らしのそばにいました。
今度、お灸を見る機会があれば、少し思い出してみてください。
あの小さな塊は、道ばたのよもぎの葉の裏から生まれたものなのだと。
よくある質問
Q. もぐさとよもぎは何が違うのですか?
もぐさは、よもぎから作られたものです。
原料がよもぎで、よもぎの葉の裏にある白い毛を集めて精製したものが、もぐさです。
Q. よもぎのどこを使うのですか?
主に、葉の裏側にある白い綿毛の部分を使います。
葉全体や茎ではなく、精製によってこの部分を取り出します。
Q. なぜお灸にはよもぎが使われるのですか?
よもぎの葉裏の毛が、炎を大きく上げず、穏やかに燃える性質を持っているためです。
この燃え方が、お灸という道具に適していました。
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