もぐさができるまで【お灸に使用するもぐさの原料はよもぎ】

もぐさができるまで【お灸に使用するもぐさの原料はよもぎ】

よもぎを刈ってから、白い繊維になるまでの工程

一キロの乾いたよもぎから、もぐさは三十グラムほどしか採れません。

お灸に使うもぐさは、よもぎからできています。ただし、葉っぱをそのまま丸めているわけではありません。使うのは、葉の裏に生えている白い絨毛だけ。そこにたどりつくまでに、いくつもの工程があります。

この記事では、よもぎがもぐさになるまでの流れを、順番に見ていきます。専門的な話に見えて、やっていることはとてもたんじゅんです。

もぐさとは、よもぎの葉の裏の絨毛

よもぎの葉を裏返すと、表は緑なのに、裏は白っぽく銀色がかって見えます。細かい毛がびっしり生えているからです。この毛だけを集めたものが、もぐさです。

つまり、もぐさづくりとは「集める」作業ではなく、「それ以外を落とす」作業だと言えます。ここが、この記事でいちばん覚えて帰っていただきたいところです。

工程① 刈る

はじまりは、葉がいちばん茂る初夏です。伝統的には旧暦の五月ごろが適期とされてきました。葉が育ちきった時期に刈ることで、必要な部分が十分に採れます。

工程② 乾かす

刈ったよもぎを乾かします。天日で干し、さらに芯まで水分を抜いていきます。生乾きのままでは、あとの工程で葉と絨毛がうまく分かれません。

ここでも、何かを加えることはありません。ただ、乾かします。

工程③ 砕く

乾いた葉を、臼にかけて砕きます。伝統的には石臼が使われてきました。

目的は、粉にすることではありません。葉の裏についた絨毛を、葉肉からはがすことです。くっついているものを、物理的に引き離す。ここから先は、ひたすら分ける作業になります。

工程④ 風で分ける

砕いたものには、絨毛と、葉肉や葉脈のかけらが混ざっています。この二つは、重さがちがいます。

そこで風にあてます。伝統的には唐箕(とうみ)という、風を起こして軽いものと重いものを選り分ける農具が使われてきました。軽い絨毛は残り、重いかけらは落ちていきます。

工程⑤ 篩にかける

さらに篩(ふるい)にかけて、残った細かい葉肉を落とします。そして、また篩う。何度も繰り返します。

繰り返すほど、白い繊維の比率が上がっていきます。この篩う回数が、もぐさの性質を決めます。回数が多く、白い繊維だけが残ったものは、指先でひねって使う点灸用に。回数が少なく葉肉も残るものは、棒や箱、台座など、肌から離して使う方法に向きます。

もぐさの種類のちがいについては、こちらの記事で詳しく書いています → 「お灸は、ひとつじゃない

どれだけの葉から、どれだけ残るのか

ここが、もぐさという素材のいちばん驚くところかもしれません。

点灸用のもぐさとして残るのは、乾かしたよもぎの三〜四パーセントほどです。さらに品質を高めようとすると、一パーセント程度になることもあります。

一キロの乾燥よもぎから、三十グラムから四十グラム。品質を上げれば、十グラム。しかも乾燥よもぎ自体、生のよもぎを干して十分の一ほどに減ったあとの重さです。

指先にのるひとつまみの向こうには、かごいっぱいの葉があります。

足すものが、ひとつもない

もぐさの工程を最初から並べてみると、あることに気づきます。

刈る。乾かす。砕く。風で分ける。篩う。

このなかに、何かを加える工程がひとつもありません。混ぜるものも、加工して別のものに変えるところもない。ただ落として、落として、落としていく。最後に残ったものが、もぐさと呼ばれます。

千年以上前から使われてきた素材が、いまも同じ考え方でつくられている。それは、この引き算のほかにやりようがなかったから、とも言えます。

よくある質問

Q. もぐさは何からできていますか。
A. よもぎの葉の裏に生えている、白い絨毛からできています。葉っぱ全体ではなく、その毛の部分だけを取り出したものです。

Q. もぐさの作り方の手順を教えてください。 
A. ①葉が茂る初夏に刈る ②天日と乾燥で水分を抜く ③臼で砕いて絨毛を葉肉からはがす ④風で軽い絨毛と重いかけらを分ける ⑤篩にかけて残りを落とす、という流れです。④と⑤は何度も繰り返します。

Q. よもぎからもぐさは、どれくらい採れますか。 
A. 点灸用で、乾かしたよもぎの三〜四パーセントほどです。さらに精製度を高めると、一パーセント程度になることもあります。

Q. もぐさに、よもぎ以外のものは入っていますか。 
A. 工程のなかに何かを加える場面はありません。よもぎを砕いて、余分な部分を落としていく作業だけで作られます。

Q. 篩う回数で何が変わりますか。 
A. 白い繊維の比率が変わります。回数が多いほど繊維だけが残り、指先でひねる点灸用になります。回数が少ないものは葉肉も残り、棒灸や箱灸、台座灸など肌から離して使う方法に向きます。

Q. どんな道具を使いますか。 
A. 伝統的には、石臼と、唐箕(風で選り分ける農具)と、篩が使われてきました。現在は機械による粉砕や選別も行われています。

Q. 家庭でもぐさを作ることはできますか。 
A. 工程そのものは単純ですが、絨毛だけを選り分けるには専用の道具と何度もの繰り返しが必要です。お灸に使うものは、専門に作られたものをお求めください。ですが、自宅で自分用としてでしたらミキサーなどを使用するとある程度のものならつくることができます。

おわりに

次にお灸を見かけたとき、あの小さな塊の向こうに、かごいっぱいのよもぎを思い出していただけたら。

わたしたちは信州でよもぎを育てています。育てているうちに、この草がどれだけ多くのことに使われてきたのかを、少しずつ知るようになりました。よもぎのはなしは、Instagramでも続けています。

 

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