こんにちは。今日は、お灸に興味がある方へ向けて、2022年に発表されたレビュー論文を参考に「お灸の歴史・理論・意義」についてまとめてみます。難しい話は噛み砕いて書くので、健康や東洋医学が好きな方も気軽に読んでみてください。

お灸ってどんな健康法?
お灸とは、ヨモギから作った艾(もぐさ)を燃やし、身体のツボを温める東洋医学の温熱療法です。古くから「鍼灸(しんきゅう)」として鍼と一組で扱われ、実は鍼よりも歴史が古い可能性があると言われています。
使われる艾はヨモギの葉を乾燥・精製して作られます。形が作りやすく、燃焼がゆっくりで香りが良いのが特徴。ヨモギは日本でも非常に身近な植物なので、昔から生活に根づいた健康法でもあります。
お灸の歴史:鍼より古い?紀元前から続く智慧
お灸の歴史は紀元前まで遡ります。中国の馬王堆漢墓(紀元前168年封印)から見つかった古文書には、すでに経絡とお灸の理論が記されており、鍼より前に体系化されていたとも考えられています。
『黄帝内経』には、寒い地域では内臓が冷えやすく、その治療として「灸が適切」と書かれています。寒さと火の組み合わせが、お灸の原点なのですね。
古代中国では、火は「陽」の象徴でした。もともとはシャーマン的な儀礼として火と煙で邪気を払う行為があり、のちに医学として整理される中で「陽気を温める」「冷えをとる」といった理論に発展していきました。
日本に伝わったのは6世紀ごろ。平安時代の『源氏物語』にも登場するほど馴染深く、江戸期には現在の「点灸」スタイルが確立。長く盲人の職業として鍼灸が発展し、いまも国家資格の専門職として続いています。家庭療法としてのお灸文化も、日本独自の魅力のひとつです。
お灸にはいろいろな種類がある
直接灸
皮膚上に小さな艾を置いて火をつける方法。日本の「点灸」は米粒ほどの小さな灸で、熱の強さを細かく調整できます。
間接灸
生姜やにんにくを挟んだり、鍼の柄に艾をつけて燃やす「灸頭鍼」、棒状の灸をかざす温灸などがあり、初心者にも取り入れやすい方法です。
ヨモギ自体にも抗酸化作用や呼吸器への作用が知られており、単なる熱刺激だけでなく植物の力も組み合わさっている点が特徴です。
お灸はどう効いているの?
論文では、お灸の作用について次のように整理されています。
1. 深い熱の浸透
間接灸をしていると、表面だけでなく「奥までしみ込む熱感」が得られることがあります。研究では、この深い熱感が出る人ほど治療効果が高い傾向があるとされています。
熱刺激は皮膚の温受容体を通じて血流を改善し、炎症を調整すると考えられています。
2. 神経炎症を抑える可能性
糖尿病性の末梢神経障害の研究では、
・炎症を促すNF-κBが抑えられ
・細胞を守るNrf2が活性化した
という報告があります。
その結果、神経の炎症が軽減し、しびれや痛みが緩和した可能性が示されています。
3. 温度が痛みに影響
実験では、47〜52度程度の「しっかり熱い」温度帯のほうが鎮痛効果が高いことも示されています。ただし、火傷には十分注意が必要です。
4. ヨモギの薬理作用
ヨモギの精油には抗酸化・鎮咳・去痰作用などがあり、燃焼後もその力が失われないと報告されています。生姜やにんにくを介した灸は、それぞれの薬効がプラスされる点も特徴です。
お灸はどんな健康トラブルに使われてきた?
研究で扱われている例としては、
・逆子
・月経痛
・便秘
・慢性疲労症候群
・変形性膝関節症
・腰痛
・更年期のほてり
・末梢神経障害
など非常に幅広いです。
特に論文では、末梢神経障害に注目しており、糖尿病以外の原因(HIVなど)による神経障害にも応用できる可能性があると述べています。
もちろん、なんでも効くという意味ではなく、質の高い研究が今後さらに必要です。
お灸の意義:昔の知恵 × 現代研究
論文の結論は、お灸を次のように評価しています。
・お灸は鍼と並ぶ東アジアの主要な治療法
・長い歴史と臨床経験がある
・近年は科学的研究が増え、作用メカニズムが少しずつ明らかに
・痛みや神経障害に対して多面的に働く可能性
・現代の統合医療の中で価値が高い
つまり、
お灸は「古い民間療法」ではなく、歴史と科学に裏づけられつつある伝統医療
という位置づけになりつつあります。
まとめ
この記事では、お灸の歴史・理論・研究について、できるだけやさしくまとめました。
・お灸は紀元前から続く温熱療法
・ヨモギの力 × 火 × ツボ という非常にシンプルかつ奥深い健康法
・血流改善、炎症調整、神経保護などの作用が研究で示唆されている
・痛み、冷え、慢性症状などに応用されてきた歴史がある
「お灸って実はすごい歴史と理論があるんだ」と感じていただけたらうれしいです。
興味があれば、鍼灸院で一度体験してみるのもおすすめです。
身体がじんわりほぐれ、心までゆるむ感覚を味わえるかもしれません。
参考文献:The Case for Moxibustion for Painful Syndromes:History, principles and rationale
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